公開日:2026.09.09 最終更新日:2026.09.10
「軸受けが当たる部分が減って、ガタが出てきた」
「メーカーに聞いたら、その部品はもう生産していないと言われた」
可動部に使うシャフトでは、こうした状況がよく起こります。シャフトは、径や長さ、段やキー溝がその機械のために決められた一品ものというケースがほとんどです。
そこで、摩耗が進んだシャフトを修理するか・作り直すかの判断が必要になります。分かれ目は、傷んでいる場所と範囲です。
今回は、その分かれ目と、依頼のときに伝えたい情報を整理しました。大津製作所は、汎用旋盤でシャフトを1本ずつ製作し、修理も手がけてきた会社です。シャフトの修理先・製作先をお探しの方は、ぜひ最後まで読んでいってください。
シャフト修理と再製作の判断基準
判断表
| シャフトの状態 | 判断 |
|---|---|
| 軸受け(ベアリング)やオイルシールが当たる部分だけが減って、ガタが出た | 修理で済むことが多い (肉盛りかスリーブで元の寸法に戻せます) |
| キー溝が広がった・つぶれた | 修理で済むことが多い (溝を埋めて切り直す、または新しい溝を切ります) |
| 軸が大きい・形が複雑(段・ねじ・キー溝が多い) | 修理で済むことが多い (作り直すより材料費と加工費を抑えられます) |
| 軸受け部が焼き付いて表面が荒れた | 修理で済むことが多い (傷が浅ければ削って肉盛り。深ければ再製作) |
| 曲がって、回すと振れが出る | 小さい曲がり:修理(矯正) 大きい曲がり:再製作 |
| 折れた | 再製作が基本 (溶接でつなぐのは応急処置です) |
| 全体が痩せている・傷んだ箇所が複数ある | 再製作が基本 |
| 図面がなく、現物しかない | どちらも可能 (現物から採寸して修理・製作できます) |
| 市販の規格シャフトで置き換えられる | 市販品でOK (購入したほうが早く、価格も有利です) |
修理と再製作の違い
| 修理(肉盛り・スリーブ) | 再製作(作り直し) | |
|---|---|---|
| 軸の形状 | 大きい軸・形が複雑な軸 | 小さい軸・形が単純な軸 |
| 軸の材質 | 元の軸を使う(肉盛りは軸の材質に合う溶接材料を選ぶ) | 材質と熱処理を特定して手配する(図面がなければ現物から) |
| 損傷レベル | 一部の摩耗(軸受け部・キー溝など) | 全体の傷み(折れ・曲がりなど) |
| 仕上がり | 傷んだ部分を元の寸法に戻す | 新品 |
| 費用 | 抑えやすい(大型ほど差が大きい) | 材料費+加工費 |
| 納期 | 材料の手配が要らない分、短い | 材料の手配から始まる (大径・特殊な材質は数カ月待つことも) |
| 注意点 | 溶接の熱で曲がり・硬化が出ることがある | 寸法の特定が必要 (図面がなければ現物から) |
シャフト修理と再製作の依頼に必要な4つの情報
| 伝える情報 | 具体的には | |
|---|---|---|
| 1 | 損傷の状態 | どこが・どう傷んだか(写真があれば写真を添える) |
| 2 | 寸法 | 全長と、最も太い部分の径 |
| 3 | 材質・熱処理 | S45C/ステンレスなど。焼入れの有無(不明でも可) |
| 4 | 使い方と相手部品 | 用途、回転数や荷重の目安、ベアリングの型番、キーの幅など |
損傷の状態は、傷んだ部分と全体の写真が1枚ずつあれば十分です。寸法は全長と最大径が分かれば、対応できる旋盤かどうかをすぐに判断できます。材質と熱処理は修理の方法を左右し、相手部品の情報は、削り直す寸法を決める手がかりになります。この4点が揃えば、修理か再製作かの判断と概算まで一度に進められる状態です。
すべて揃っていなくても構いません。分からない項目は、現物を見て判断できますのでお気軽にご相談ください。
シャフト修理で直せる損傷と、再製作になる損傷

シャフトの損傷は、大きく以下の3つに分かれます。
- ①軸受け部の摩耗・ガタ(修理で直せる)
- ②キー溝・段付き部の傷み(修理で直せることが多い)
- ③折れ・曲がり(再製作が確実)
① 軸受け部の摩耗・ガタ|肉盛りかスリーブで元の寸法に戻せる

ベアリングやオイルシールが当たる部分の摩耗は、シャフトの不具合で多いケースです。長年の回転で軸受け部だけが痩せ、ベアリングの内輪が軸の上で滑るようになると、ガタと振動が出ます。
直し方は2通りです。1つは、摩耗した部分に溶接で肉を盛り、旋盤で元の寸法に削り直す方法です。もう1つは、摩耗部を一段細く削り、そこにスリーブと呼ばれる筒を焼きばめして削り直す方法です。どちらも、ベアリングがはまる寸法(はめあい)まで戻せます。
ただし、肉盛りは溶接の熱が入るため、細い軸ほど曲がりが出やすくなります。焼入れした軸では、溶接部が硬くなって割れの原因になることもあります。摩耗がごく浅い場合は、めっきや溶射で肉を足す方法もありますが、こちらは表面処理の専門会社の領域です。当社の守備範囲は、設備や装置に使われる大きめのシャフトを肉盛りとスリーブで直すことで、小型の精密部品は対象外です。どの方法が向くかは、軸の太さと材質、摩耗の深さで決まります。
再発を防ぐには、摩耗の原因からチェックします。潤滑不足やベアリングの固定不良が原因なら、シャフトを直しても同じ場所がまた減るため、根本的な対策が必要になります。
② キー溝・段付き部の傷み|埋めて切り直せる
キー溝が広がってキーが緩むと、回転にガタが出て、放っておくと溝の角から割れが進みます。修理の仕方は、溝を溶接で埋めて旋盤で軸径を戻し、フライスで新しい溝を切り直す、という手順です。相手部品との位置関係が許せば、溝の位置をずらして新しく切る方法もあります。
段付き部の傷やねじ部のつぶれも、同じ考え方で修正できます。
③ 折れ・曲がり|再製作が確実
折れたシャフトを溶接でつなぐ方法は、応急処置としては行われています。ただし回転軸には繰り返しの力がかかるため、つないだ部分からまた折れる恐れがあります。機械を長く使うなら、再製作が基本です。
曲がりは、振れの量によります。小さな曲がりはプレスで押して矯正できますが、精度が要る軸や、矯正しても戻る軸は再製作になります。目視で真っすぐに見えても、回転させると振れが出ることは珍しくありません。
折れや曲がりには、形状に起因するケースがあります。段付き部のコーナーが鋭い、キー溝の端に力が集中している、といったものです。再製作するときはコーナーRを大きめに取るなど、同じ折れ方をしにくい形状に改善して製作することもあります。
依頼前に知っておきたいシャフト修理・再製作の基礎知識

修理か再製作か判断は、軸の大きさで変わる
大きく形の複雑な軸ほど、修理が有利です。作り直すと材料費も加工時間も大きくなるため、傷んだ部分だけを直せば費用と日数を抑えられます。反対に、小さく単純な軸は、削り出したほうが早く確実な場合があります。
納期の差は、材料の手配にあります。修理は今ある軸を使うため、材料待ちがありません。再製作は材料の手配から始まり、大径や特殊な材質では、材料をメーカーに特注して数カ月待つこともあります。機械を止められる日数から逆算して、どちらを選ぶかを決めます。
図面がなくても、現物から再製作できる
古い機械ほど、図面は残っていません。摩耗した現物しかない場合でも、現物を採寸して製作できます。摩耗した部分の寸法は、相手のベアリングの内径やキーの幅から決めます。依頼のときに相手部品の情報が役に立つのは、このためです。
ねじが切ってあるシャフト(送りねじ・台形ねじ)の場合は、ナットとの噛み合いがポイントです。軸だけを作り直すと、相手のナットと合わないことがあります。台形ねじの規格の見分け方と仕様は、こちらの記事が参考になります。

材質がわからない場合は、使用環境と現物から選べる
材質が不明でも、使用環境をお伝えいただければ製作側で選べます。一般的な機械の軸は炭素鋼(S45Cなど)が基本で、屋外や水中で使うものはステンレスを選びます。
注意したいのは熱処理です。焼入れされた軸は表面が硬く、肉盛り溶接に向かないことがあります。現物の硬さを確かめたうえで、修理か再製作かを判断します。
長いシャフトは、対応できる旋盤を先に確認する
数メートルを超える長いシャフトは、その長さを支えて回せる旋盤がなければ、修理も再製作もできません。長いほどたわみや振れが出やすく、対応できる会社は限られます。
修理でも再製作でも、全長をあらかじめ確認しておけば「心間(削れる長さ)が足りない」と断られる手間を省けます。
大津製作所が対応できるシャフト修理・再製作の範囲
汎用旋盤で、1本ずつ製作・修理しています。溶接と旋盤加工を社内で行うため、肉盛りから削り直しまでを1つの窓口で進められます。
| 項目 | 対応範囲 |
|---|---|
| 修理 | 軸受け部の肉盛り・スリーブ/キー溝の埋め直し・切り直し/ねじ部・段付き部の修正 |
| 再製作 | 現物採寸からの製作(図面作成も可能)/段付き・キー溝・ねじ部を含む一体加工 |
| 直径 | φ900まで(全長200mmまで) φ600まで(全長200mm超) |
| 全長 | 9,000mmの製作実績 |
| 材料 | S45C、ステンレスなど |
| 加工精度 | h7公差 |
| 製作してきたもの | ゴンドラ・ロープウェイ用シャフト、水門用シャフト、送り親ねじ、油圧ジャッキ用ねじシャフト、撹拌用スクリューシャフト |
市販の規格シャフトで置き換えられるものは、購入したほうが早く、価格も有利です。当社は汎用旋盤で1本ずつ作るため、大径・長尺や、段・ねじ・キー溝の付いた1本ものの加工を得意としています。
よくあるご質問
まとめ|シャフト修理と再製作は、損傷の場所と範囲で判断しよう

シャフトの修理と再製作の分かれ目は、大きくわけて次の2点です。
①軸受け部やキー溝など一部の摩耗なら修理
②折れ・曲がり・全体の傷みなら再製作
加えて、ワークサイズが大きくなるほど、費用・工期の面で「修理が有利になる」点をおさえておきましょう。
大津製作所は汎用旋盤で1本ずつ製作し、全長9,000mmの加工実績があります。溶接と旋盤加工を社内で行い、修理も再製作も、図面がない現物からも対応しています。
「直せるのか、作り直すしかないのか分からない」。その状態からで構いません。現物の写真をお送りいただければ、修理か再製作かの判断からお手伝いいたします。
