公開日:2026.08.20 最終更新日:2026.09.10
「動きが悪くなってきたので交換したいけど、部品が見つからない」
「図面が残ってなくて、規格も仕様もわからない」
台形ねじの交換では、こうした状況がよく起こります。
カタログに同じ部品が見つからない原因の多くは在庫切れではありません。規格にあるサイズがすべて市販されるわけではなく、大径(目安としてφ400〜500以上)・長尺・特殊仕様は製作できる会社が限られているのです。
古い設備や工作機械の場合は、生産終了のため修理依頼したくてもできない、というケースもあります。
そこで今回は、台形ねじの特注が必要な判断基準と、必要な場合に準備すべき情報を整理しました。
大津製作所は、汎用旋盤で台形ねじを1本ずつ特注製作してきた会社です。
台形ねじの特注先をお探しの方は、ぜひ最後まで読んでいってください。
台形ねじの特注が必要なケース
自社のケースがどちらに当てはまるかを以下の表で確認できます。(※目安です)
判定表
| 条件 | 判定 |
|---|---|
| 呼び径が50を超える | 特注が確実 (規格はあるが流通していない) |
| 全長が2mを超える | 特注が確実 (2mを超えるものは特殊) |
| 特殊仕様(左ねじ/多条ねじ) | 特注が確実 |
| ステンレスなど材質の指定がある | 特注が確実 |
| 図面がなく、現物しかない | 特注が確実 (現物の採寸から製作できます) |
| 軸とナットをセットで交換したい | 特注を推奨 (別々に手配すると噛み合わないことがある) |
| カタログ品はあるが、納期が数カ月かかる | 特注も検討 (機械を止める損失と比べて判断) |
| 呼び径が25以下で、仕様も標準的 | カタログ品でOK (専用機で量産する会社の方が、価格も納期も有利です) ※カタログをご自身で調べたほうが確実です |
カタログ品と特注品の違い
| カタログ品 | 特注品 | |
|---|---|---|
| 呼び径・全長・仕様 | 呼び径が50まで 全長2mまで 大半が右ねじ・1条・炭素鋼 | 自由(加工業者の設備による) |
| 納期 | 在庫があれば、早い 在庫がなければ、数カ月 | 柔軟(加工業者との調整) |
| 軸とナットの適合 | 規格の違いで合わないことがある | セットで製作可能 |
| 図面がないとき | 自身で調査が必要 | プロが現物調査可能 |
| 部品価格 | 安い | 高い |
台形ねじの特注に必要な5つの情報
| 伝える情報 | 具体的には | |
|---|---|---|
| 1 | 寸法 | 外径・ピッチ・全長 |
| 2 | 規格 | Tr/TM/TW のどれか※ |
| 3 | ねじの仕様 | 条数(1条・多条)、右ねじ/左ねじ |
| 4 | 使用環境 | 屋内/屋外・水中、荷重の目安 |
| 5 | ナット・追加加工 | ナットの要否、キー溝・軸端の形状 |
※ Tr:現行JIS規格(2026/8時点)、TM/TW:旧JIS規格
寸法は外径・ピッチ・全長の3つ、規格は呼び記号を確認します。ねじの仕様は、条数とねじれの向きのことです。使用環境は材質を決める手がかりになり、ナットの要否と追加加工の有無は、組み合わせや取り付け方の検討に必要になります。この5点が揃っていれば製作可否を判断でき、スムーズに見積まで進められます。
台形ねじの特注が必要な理由
台形ねじが特注になるパターンは、大きく以下の3つに分かれます。
- ①直径が大きくなる場合
- ②全長が長くなる場合
- ③左ねじ・多条ねじなど特殊仕様の場合
① 直径|規格はTr300まで、一般流通はTr50まで
現行のJIS規格(JIS B 0216-2)は、メートル台形ねじの呼び径を Tr8 から Tr300 まで定めています。(引用:「メートル台形ねじ」JIS B 0216:2013)
しかし、需給バランスの転換点となるTr50前後を境に、規格品と言えど、一般流通品から受注生産品に変わる点には注意が必要です。
規格の上には存在していても流通の上には存在しない、この差の部分が特注の領域にあたります。
② 全長|規格に定めはなく、流通は2mまで
JISが定めているのは、ねじ山の形と呼び径・ピッチの組み合わせまでで、長さについての規定はありません。全長は、発注する側が図面で指定する項目になります。
では何が長さの上限を決めているかというと、規格ではなく設備と材料の都合です。長いねじを削るには、全長を支えながら回せる旋盤に加え、たわみや振れを抑える職人の技術が必要です。
こうした制約から、一般に流通しているのは2mまでで、それを超えると扱える会社が減るのです。長尺ねじの相談で「心間(削れる長さ)が足りない」と断られるのは、この設備の制約によるものです。

③ 仕様|左ねじ・多条ねじも規格にはあるが特殊
左ねじも多条ねじも、規格の外にあるわけではありません。JISには呼び方まで定められていて、多条ねじは「Tr40×14(P7)」のようにリードとピッチを併記し、左ねじは末尾に「LH」を付けて表します。(引用:「ねじの表し方」JIS B 0123:1999)
それでも入手が難しいのは、在庫として置かれているのが右ねじ・1条・炭素鋼のものが中心だからです。以下のような仕様は、流通量が少ない点には注意が必要です。
- 左ねじ
- 多条ねじ
- ステンレスなど、材質の指定
- 二つ割りナットなど、ナット形状の指定
これらの特殊仕様に加え、大型・長尺になると、市販品から見つけ出すのはさらに難しくなります。
依頼前に知っておきたい台形ねじの基礎知識
規格(Tr・TM・TW)の違い
現行の規格はTrで、ねじ山の角度は30度です。旧規格には、30度のTMと、29度のTWがあります。TrとTMは角度が同じですが、呼び径ごとのピッチや各部の寸法が異なります。(引用:「送りねじ規格表」東洋シャフト)
TM・TWは現在も市販されており、古い規格だから入手できないというわけではありません。3つの規格が併存しているのは、機械の寿命が規格の寿命よりも長いためです。TWからTM、TMからTrへと規格の世代が移り変わっても、前の世代の機械は現役で動き続けているのです。
二つ割りナットでガタを詰められる

台形ねじのナットには、二つ割りナットと呼ばれる形式があります。ナットを長手方向に半分に割り、半径方向から締め込む構造です。この構造なら、摩耗でガタが出ても締め込むだけで詰められます。台形ねじの山には斜面があるため、半径方向に締め込む力がそのままガタの調整として働くためです。
長く使う設備で台形ねじが選ばれる理由のひとつが、この調整のしやすさにあります。つまり台形ねじは、摩耗を前提に運用できるねじだと言えます。
材質がわからない場合は使用環境から選べます
現物の材料が何かわからない、という相談は珍しくありません。その場合は、使用環境をお伝えいただければ製作側で材質を選定できます。屋外や水中で使うものはステンレス、一般的な環境では炭素鋼が基本です。
ナットは軸より柔らかい材質を合わせるのが定石で、青銅系がよく選ばれます。摩耗をナット側に集めて、交換しやすくする考え方です。黒染め・メッキなどの表面処理も指定できます。
大津製作所が対応できる台形ねじの範囲
汎用旋盤・NC旋盤で、1本ずつ製作しています。量産の設備ではないため、1本からの製作に向いています。
| 項目 | 対応範囲 |
|---|---|
| 直径 | φ900まで(全長200mmまで) φ600まで(全長200mm超) |
| 全長 | 9,000mmの製作実績 |
| 材料 | S45C、ステンレスなど |
| 特殊仕様対応 | 左ねじ/多条ねじ/旧規格(TM・TW) 二つ割りナット/軸とナットのセット製作 キー溝・軸端の追加加工/図面がない場合の現物採寸 |
| 加工精度 | h7公差 |
よくあるご質問
まとめ
台形ねじが特注になるのは、①呼び径が50を超える、②全長が2mを超える、③左ねじ・多条ねじなどの特殊仕様がある、の3つのケースです。いずれかに当てはまるなら、既製品を探すより製作を依頼するほうが早く進みます。
大津製作所は汎用旋盤で1本ずつ製作し、全長9,000mmの加工実績があります。軸とナットはセットで検査したうえでお納めしており、左ねじ・多条ねじ・旧規格(TM・TW)にも対応しています。
「規格がわからない」「図面も残っていない」。その状態からで構いません。現物から採寸し、製作の可否と概算をお返しします。お気軽にご相談ください。
